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番外編 おかえり
「礼の目的はおそらくこれだろう」
彼が黒い手帳をジャケットの内ポケットから取り出した。
「昔福光の選挙事務所の責任者をしていた乙幡 さんが俺らにこれを託した」
「卯月、今乙幡って言ったよな?」
国井さんの顔色が変わった。
「あぁ。言った。乙幡さんがどうかしたか?」
「今どこに住んでいる?もしかして栃木か?」
「そうだ。元々は都内に住んでいたが余命宣告を受けてずっと空き家になっていたカミさんの実家に移り住んだとか話していた」
「今朝乙幡さんの家に強盗が入った。乙幡なんてそうない苗字だろう」
「ずいぶんとタイミングがいいな。乙幡さんは?無事なんだろうな」
彼の問い掛けに国井さんの表情が暗く沈んだ。
「そうか。あと一日引き留めておけば事件に巻き込まれずに済んだかもしれない。帰さなければ良かった」
後悔しても遅い。
「家のなかはしっちゃかめっちゃかに荒らされていた。仏壇にあった十万の現金には目もくれず何かを必死で探したのだろう。ゴミ箱のなかにK駅構内のコンビニエンスストアのレシートとクリームボックスの袋が捨ててあった。所轄の刑事とはちょっとした知り合いで、俺が福島にいるのを知ってそれで俺に連絡を寄越した」
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