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番外編 おかえり
「悪いことはなにもしていないんだ。正々堂々と正面から入ってきただけだ。威勢がいいのは上っ面だけで何もできない。取るに足らない連中だ」
ジャケットを肩に担ぎ余裕の笑みを浮かべた。
「遥琉さんどうして」
「どうしてってめったなことでは連絡を寄越さないチカからメールが来た。もしかしたら何か起きたんじゃないか、そう橘に言われて心配になって駆け付けたんだ。未知やみんなが無事で良かった」
ホッとして胸を撫で下ろす彼。でも国井さんの一言で顔つきががらりと変わった。
「卯月、城さんと会ったか?」
「いや、会ってない」
「そうか」
「城がどうしたって?」
「そう怖い顔をするな」
「城のせいで四季の人生が狂ったといっても過言じゃない。俺は絶対ヤツを許さない」
キッパリと言い切った彼に、
「ハルくん、カッコいい!」
チカちゃんが黄色い声をあげてパチンと両手を叩いた。
「俺だって城は苦手だ」
国井さんがチカちゃんの手に自分の手を重ねるとぎゅっと握った。
「もしかして焼きもちを妬いてる?」
「卯月相手に焼きもちを妬くわけがないだろ?」
「ふぅ~~ん。そうなんだ」
チカちゃんが嬉しそうに国井さんの顔を覗き込むと、ゴボンとわざとらしく咳払いして顔をそらした。
「会計を済ませてくる」
国井さんが立ち上がった。
「会計は済ませた。森崎とコウジの分もついでに」
「いつの間に」
「いつの間にって、さっきだ」
レシートを二枚ヒラヒラと振る彼。
「店長とは顔馴染みでな」
「卯月さんにはいつもお世話になってます」
厨房から彼と同年齢くらいの男性が出てきた。
「今日は妻と友人たちが世話になった。何かあったら連絡をくれ。忙しい時間帯に悪いな」
「いいえ、卯月さんのお知り合いならいつでも大歓迎です」
にこにこと常に笑顔を絶やさない店長。彼の顔の広さにただただ驚くばかりだ。
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