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番外編 おかえり

「この前商工会の打合せで利用したとき、料理に髪の毛が入っていたとクレームをつけて金銭を要求する男がいたんだ。一見するとどこにでもいるサラリーマンだが一重だからか目付きが悪くてな。午後四時で客は俺たちとソイツだけ。店のスタッフはさっきの店長と厨房に一人」 「いちゃもんをつけたのか?」 「そうだ。チャラチャラした赤髪のアルバイトがいるだろう。ソイツの髪だと断言した。男に名指しされたそのアルバイトは熱を出して休みだった。それを聞くなり男が突然逃げ出したからとっ捕まえた。まずは自分が食べたものくらいちゃんと払え。万引と食い逃げは悪いことだって小学生でも分かることだってな」 「人助けをしたんだ。困った人がいればほっとけないもんな。卯月らしいな」 「困ったときはお互い様だろ?褒めても何も出ねぇぞ」 彼が照れ笑いをしていた。ファミリーレストンを出ると彼が乗ってきた車が横付けされていた。 「未知とナオは俺と一緒な。光希と七海は国井の車に乗せてもらえ。森崎とコウジはヤスと一緒に帰ってこい。あと三分もしたらゆきうさぎ丸がここに来る。いいか喧嘩を売られても絶対に買うんじゃねぇぞ。我慢比べだ」 「この状況で簡単に言うな」 待ち構えていた男たちが指をポキポキと鳴らしながら僕たちにゆっくりと近づいてきた。

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