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番外編 おかえり
「そうだ、コイツ……」
男の一人がボソリとつぶやいた。みるみるうちに顔が青くなっていった。
「カドタさん、ヤバイっす」
「何がだ」
声を荒げる男。
「あ~~あ、まどろっこしいな。言いたいことがあるならはっきり言え」
「度会の倅です、コイツ」
「嘘だろ」
人は見かけによらないもの。一様に驚いていた。
「そだ有名にはなりたくないんだよな~~俺。まだまだ下っ端だし。ずいぶんとまぁ、忙しいみたいだな。昨日は飯坂温泉にいたと思ったら、今日はここにいるし。シノギの羽振りがいいなら俺も一枚噛ませて欲しいものだ」
ニヤリと笑うヤスさん。
「ふざけんな。お前みたいな青二才」
忌々しいとばかりに吐き捨てる男。
「冗談だよ。こちらから願い下げだ」
ヤスさんは余裕綽々としていた。
「森崎、コウジ、帰るぞ。車に乗れ」
ヤスさんが二人に声を掛けて運転手側のドアを開けて乗り込もうとした時、男たちの後ろにいた若い男が何かを握り締めてヤスさんに向かって無言で突進してきた。
反射的に体を右に反らして避けると、空中へと飛び上がり、男の首筋に膝蹴りを一発入れた。アスファルトの地面に倒れ込み呻き声をあげる男の手からその何かを取り上げた。ものの数秒、あっという間の出来事だった。
「俺の命を狙うなどお門違いも甚だしい」
鋭い眼差しで睨み付けると、白いタオルで包まれたそれを遠くに投げて車に乗り込んだ。それを拾ったのは通報を受けて駆け付けた警察官だった。ゆきうさぎ丸は何事もなかったようにそこから走り去った。
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