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番外編 おかえり

「ヤスさんマジで勇ましいです。たった一人で吉柳組の連中と対峙したんでよ。華麗な膝蹴りもこの目でしっかりと拝めましたし言うことないです」 コウジさんがいつになく興奮していた。 「柚原とヤスはカシラになる最有力候補だったんだ。十年に一度の逸材と言われながら二人ともカシラになるのを固辞した」 「だから鞠家さんがカシラになったんですね」 「あぁそうだ。地位と名声よりも娘を選んだ。似てないようで二人は似ている」 「第一線から退き、能力も隠していますしね。だから誰も気付かない。カドタという男、ヤスさんのことを知りませんでした。でも手下の一人は度会さんの倅だと知っていました」 「やっぱりカドタだったか。どうりでどこかで見たことがある顔だとは思ってはいたんだ。七海に聞いたらカドタは吉柳組の跡取り息子の教育係みたいだ。いつも行動を共にしているみたいだが、どういうわけか今日だけは別行動だ。どこかで悪さをしてなければいいがな」 彼の危惧はやがて現実のものとなる。 青空さんの声が玄関の方から聞こえたような気がして。思わず立ち止まった。 「どうしたのマ―?」 「那和いきなり止まらないで。ご飯を落としたらどうするの?」 「僕悪くない。マ―が急に止まるから」 「ごめんなさい。青空さんの声が聞こえたような気がして」

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