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番外編 おかえり

「那和は聞こえた?」 「何も聞こえないよ。気のせいじゃない?」 「だよね。やっぱり聞のせいだよね。こんなに早く帰ってくる訳ないもんね」 「ただいまなのだ。なんで鍵がかかってるんだ」 今度ははっきりと青空さんの声が聞こえてきたからびっくりした。 「えぇ~~!嘘~~早くない?」 紗智さんと那和さんも驚いて眼を丸くしていた。 ご飯を彼と子どもたちに出してから玄関に急いで向かった。 「ごめんなさい。まさか今日帰ってくるとは思わなかったから」 カチャっと鍵を開けると、 「ただいまなのだ。さすがは姐さん。気づいてくれた。あやうく野宿するところだった」 青空さんが嬉しそうな笑顔を見せた。 「あと一週間くらい手伝うって遥琉さんから聞きました」 「俺も一週間、なんなら二十日、じいちゃんとみっちゃんの手伝いがしたかったが、町中にマスコミが大勢いるんだ。桃畑に勝手に入るし、路上駐車されて近所迷惑だ。じいちゃんとみっちゃんは仕事にならない。迷惑を掛けられないから一旦帰ってきた。落ち着いたらまた行く」 「とにかく無事で良かったです。ご飯は?」 「さっき食べたばかりなのにもうペコペコだ。さっきから何か入れろってうるさいんだ」 青空さんが笑いながらお腹を擦った。 「チカ久し振りだな。声でいるとすぐに分かったぞ」 「お邪魔してま~~す!本当に久し振り~~!」 ノンアルコールの缶ビ―ルを掲げるチカちゃん。 「また会ったな」 少しお酒を呑んだだけで顔が赤くなる国井さん。二人ともすこぶる機嫌がいい。

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