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番外編 おかえり

「青空、福光の人たちには常識というものが通じないよ。欲と権力に取り憑かれた悪魔みたいな人たちだもの。プライドも高いし、普通の人たちとはかけ離れた価値観を持っているし。金銭感覚もお金に対する執着心もすごい。僕のことをいまだに疫病神、虫けら以下と言ってるくらいだから。ね。僕はいいよ、何を言われても我慢をすればいいだけだから。でも未知のことを笑いながら悪く言うのだけはどうしても許せなかった」 ナオさんが青空さんと甲崎さんのご飯と味噌汁をお盆に乗せて持ってきてくれた。 「ナオさん、それって……」 「菱沼金融に礼さんから電話がきたんだ。礼さんが福島にくる一週間くらい前かな。ごめんね、未知。黙ってて」 ううん、大丈夫。首を横に振った。 「もしかしてこれは安川さんちのなめこか?」 青空さんが歓声をあげた。 「そうだよ。青空が好きだからたくさん持ってきてくれたんだよ。冷凍庫にまだまだあるから。おかわりもたくさんあるよ」 「よっしゃ―!謝謝《シェシェ》」 小さくガッツポ―ズをした。何気なく発した短いその言葉に甲崎さんが声を詰まらせた。

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