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番外編 おかえり

「呼んだ?」 光希さんが急に顔を出したものだから、譲治さんがうわぁ~~と驚いて腰を抜かしていた。 「驚かせてごめんね。甲崎さんが持ってきてくれたお土産を仏壇にお供えしようと思ってね。大丈夫?立てる?」 光希さんが譲治さんの手を引っ張り起こしてくれた。 「コウジと達治のことは遼さんと龍に任せておけば大丈夫だよ。心配はいらない。今は兄貴と部屋住みの新人という立場だから気安く話せる関係じゃないけど、達治の頑張りしだいではもっと上にいけるはず。そうなればコウジと対等に話せるようになって距離もぐんと近付くと思う。コウジは覃と違って一応大人だから達治が一人前になるまでは待てが出来ると思うのよ」 「覃と何が違うの?」 きょとんとする譲治さん。 「だからそれは……」 光希さんは言葉に詰まりながらもゆったりとした口調で同じ目線で譲治さんに話しかけた。 「覃に会いたいな……好きって言えるかな……でも、ちょっとこわいな」 「光希さん、覃さんは神出鬼没です。噂をしたら本当に出てきますよ」 本人は驚かそうとは思っていないみたいだけど、どこから現れるか分からないからそれが怖い。振り向くと後ろに真顔で立っているんだもの。本当に心臓に悪い。 譲治さんに好きって言われたら間違いなく暴走するもの。 「なんだみんないたのか」 青空さんがひょっこりと顔を出した。手に火のついていない線香を一本だけ持っていた。 「線香をあげようと思ってな。藍子さんに感謝だ」

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