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番外編 おかえり

「あのね、パパね、ままたんにあっぷ、めっ、いっつもおこられてるんだよ」 「そうなのか?」 「うん!そうだよ!」 自信満々に答える遥香。 「みみかして」 得意気な顔で国井さんの耳にゴニョゴニョと小声で話しかける遥香。お喋りが大好きだから誰かに話したくてうずうずしていたのかもしれない。遥香が余計なことを話さないかヒヤヒヤした。 最近早起きの太惺と心望。今日は珍しく起きない。手を万歳して熟睡している。陽葵もすやすやと眠っている。朝からバタバタで彼の寝顔を見る暇なんてなくて。こんな風に静かな環境で彼の寝顔を見るのが本当に久し振りで、思わずじっと見詰めていたら、 「眉間に皺が寄っているぞ」 彼の声が聞こえてきたからドキリとした。 起こさないように彼の顔をそっと覗き込むと瞼はまだ開かない。やっぱり寝言だったのかな?そんなことを思いながら何気に耳を見ると違和感を感じた。あれ、こんなところに黒子あったかな。 指先をそっと伸ばし黒子に触れようとしたら、 「だから眉間に皺が寄っているぞ、何回言えば分かるんだ」 ギクッとして顔を上げると、微苦笑を浮かべる彼と目があった。 「えっと……そ、その……違うの」 「何が違うんだ?言ってみ」 「黒子」 「黒子?」 「こんなところにあったかなって思って」 耳の下を指差した。 「さすがは俺の未知だ。よく気づいたな。良かった」 「何が良かったの?」 「なんでもない」 質問をはぐらかすと、そっと抱き締められた。

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