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番外編 おかえり
「人間は悪い噂が大好きだから、否定されると楽しめなくなる。だから、火のない所に煙は立たないと噂を事実化して、福光に揺さぶりをかけるんだよ」
「どうするんだ遥琉?」
「例えば、福光が選挙事務所のスタッフの女子大生を乱暴して妊娠させたという噂、聞いたか?あり得ないよな。あの聖人君子の福光に限って。度会さんならどう答えますか?」
「俺なら、いや、あるかもな。と答える。政治家も生身の人間だ」
「そうやって噂を事実化してしまうんですよ。二十年も前のことなんて記憶にないと高を括る福光をギャフンと言わせるんです」
「なるほどな。うまく行くか?」
「記憶がないなら思い出してもらうまでです。こっちには翔がいる。それに青空という動かぬ証拠があります。もし記事を差し止められたらSMSを最大限に利用します。吉村というSMSに明るい協力な助っ人がいます」
「遥琉、お前さんは相変わらずモテモテだな。またファンが増えたな。そのくらいにしておかないと信孝が焼きもちを妬いてそのうち暴走すんじゃねぇのか」
「暴走させませんよ。安心してください」
彼は余裕綽々としていた。
「晴と未来は置いていっていいぞ。たまには子供抜きで夫婦水入らずの時間を過ごしてきたらいい。仕事も休みだし、翔みたくお前らもリフレッシュしてこい。どうした信孝?嬉しくないのか?」
不愉快そうにむっすりとする信孝さん。
「吉村は青空が用があって呼んだんだ。俺と二人きりになることはない。それに吉村には……」
「斎藤がいるってだろ!?それは分かるけど……」
そこで言葉を濁す信孝さん。彼より年上なのになぜか彼の前では駄々を捏ねて、ぶすくれて、手のかかる我が儘な子どもになってしまう。ナオのほうが大人だ。参ったな。彼の口癖だ。
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