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番外編 おかえり
「ナオは?」
側に控えていた佐治さんに声を掛ける彼。
「子どもたちと一緒に庭にいます」
「そうか」
彼が信孝さんの腕を掴むとどこかに連れていった。
「最近どんどん甘えん坊になっていませんか?気のせいのレベルを超えていますよ」
「自分より若くてカッコいい男性が遥琉さんのまわりに自然と集まってくるから、信孝さんはもしかしたら焦っているのかも知れません。信孝さんにとって遥琉さんは弟というよりは親に代わる存在なので、子どものころの寄る辺のない寂しさをもう二度と味わいたくないんだと思います」
「補佐の気持ちも分からなくはないですが、ねえさんはやっぱり凄いです。尊敬します」
褒められるようなことは何もしないのに。足を引っ張ってばかりいるのに。気恥ずかしいようなそんな気持ちになった。
「僕よりナオさんのほうが何倍も凄いですよ。僕なんて足元にも及びません」
そんな会話をしていたら、
「えぇ~~マジっすか。コウジ兄貴三春に行ったんすっか。なんも聞いてないっす」
過足さんのよく通る大きな声が聞こえてきた。
「軽トラで追い掛けます。そんなの当たり前じゃないですか。コウジ兄貴水臭いっす。俺に内緒で他の男と出掛けるなんて。なんで俺も連れていってくれないんですか。俺とコウジ兄貴の仲じゃないですか」
過足さんの応対をしているのはヤスさんみたいだった。
「そういえば過足はコウジが好きだったな。モテる男は辛い。待つ身も辛いのにな」
佐治さんが自嘲気味に笑った。
それってもしかして渋川さんのことかな。
「あの、佐治さん……」
声を掛けようとしたら、
「未知、呼んだ?」
ナオさんがひょっこりと姿を現した。
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