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番外編 おかえり
「ダメだろう斎藤。ハルちゃんを泣かせたら。オヤジが吹っ飛んでくるぞ。ハルちゃん、旨いぞ。おかわりするか悩んでいたんだ」
青空さんがフォークに刺した一口大のホットケーキを掲げた。
「そらさん、ほんと?」
「あぁ、本当だ。最高に旨いぞ。だから泣くな」
「青空さんの言う通り、すごく美味しいよ」
青空さんと斎藤さんに宥めてもらいようやく泣き止む遥香。
「おかわりだ」
空になった皿を差し出す青空さん。
「吉村さん、食べないと泣かれるぞ」
「そんな感じですよね。とりあえずいただきます」
蜂谷さんに言われて慌てて両手を合わせる吉村さん。
「いいですね、賑やかで」
「静かなのは具合が悪いときと悪戯しているときだけだ。だからこのくらい賑やかなほうがちょうどいい」
蜂谷さんの表情が緩んだ。
「二十年以上も昔のガラケーだ。やはり吉村でも復元するのは難しいか」
「いや、そういう訳でもないんですが……あともうちょっとなんですよ」
悪戦苦闘することニ時間。
「ヨッシャ~~!来た!」
「復元出来たのか?」
「全部ではないですが……すみません力及ばずで」
パソコンの画面を覗き込む青空さん。
「いや、そんなことない。これが俺の母親か」
優しい表情を浮かべ顔をほころばせた。
「じぃちゃんとみっちゃんに今すぐに送りたい」
「蜂谷さん、携帯にデータを送信しますので、あとはよろしくお願いします」
「おぅ、分かった」
「斎藤にもデータを送るから……斎藤?」
振り返る吉村さん。
「やけに静かだと思ったら……」
くすりと笑う吉村さん。
お腹いっぱいになり、待ちくたびれてテーブルに突っ伏して寝てしまった。
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