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番外編 おかえり
「この俺に対抗しておかわりを三回もしたからな。そりゃあそうなるわな。食い意地を張らせて、すまんな」
「いえ、大丈夫です」
吉村さんが笑いながら首を横に振った。
「つかぬことをお伺いしますが、お二人はどうやってパートナ―と出会い、両想いになったのですか?」
「かなり長くなるぞ。それでもいいなから話してもいいぞ」
「大海原の中でたった一人しかいない運命の相手に出会える確率なんてとても低いのに。卯月さんと未知さんの馴れ初めも聞きました。まさに運命の出会いですよね?」
「ここだけの話しにして欲しいんだが、オヤジとねえさんが出会うように仕組んだ人がいる。誰とは言わないが。彼のお陰で今があるから感謝しないとならない」
「蜂谷さんは刑事を辞めたこと、後悔はしていないんですか?」
「あぁ」
間髪入れずに即答する蜂谷さん。
「これからのこととかあれこれ悩んだりはしなかったんですか?」
「ぜんぜん」
「でもなぜヤクザに?」
「オヤジの懐の広さとあたたかさと人間性に惚れて一生この人についていこうと決心した」
「そうですよね、分かります」
「というのは嘘で」
「え?嘘なんですか?」
「まぁ、半分は嘘じゃないが、ねえさんのことが寝ても覚めてもとにかく大好きな男がいて、今は入院中で、でももうじき帰ってくるが、ソイツと一緒にねえさんを守ろうと思ったんだ。子どもたちも全員可愛いし、まさに天使だ。守りがいがあるというものだ」
「帰ってきたら挨拶しないと。どんな人なんだろう。今から会うのが楽しみです」
「若いのにかなり訛っているぞ」
「大丈夫です」
「せいぜい斎藤に焼き餅を妬かれない程度にしろよ。無事に両想いになれるように祈っている」
「はい、ありがとうございます」
吉村さんが照れながらも幸せそうな笑顔を見せてくれた。
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