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番外編 おかえり

「吉村いいことを教えてやる。弓削はなヤスの……」 「青空、ストップ」 携帯を操作していた蜂谷さんが待ったをかけた。 「みんな知ってることだろ?知らぬは本人たちだけで。告白しないうちにアイツらおじいちゃんになるぞ」 「おじいちゃんになる前にオヤジが何とかする。オヤジの命令は絶対だからノ―は言えないはずだ」 「いいですね、みんな恋をしているんですね。卯月さんは縁結びの生き神で、恋のキューピットだと上司がよく話しています」 「阿部さんがそんなことを?」 「オヤジ、もしかして有名人か?」 「はい、このまま……」 言いずらそうに言葉を濁す吉村さん。 「裏社会で埋もれさせるには惜しい人、そう言いたいんだろ?家庭に恵まれなかったオヤジは昔から仲間を大事にしてきた。菱沼組の組長として、一家の大黒柱として、自分の家族と、構成員とその家族の生活を守らないといけない責務がある。今さら後戻りは出来ない」 「もう食べれません。ハルちゃん、みゆちゃん許して」 斎藤さんの声が聞こえてきてドキッとして振り返る三人。 さっきまでテーブルに突っ伏して寝ていたのに、いつの間にか畳の上に横になっていた。 「寝言か。なかなか面白い男だな」 青空さんがくすりと笑った。

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