3658 / 4016

番外編 おかえり

「今、いいですよ。忙しくないですよ。どうしたんですか?」 「これを覃に読ませたい」 白い便箋を差し出された。 「もしかしてラブレターですか?」 「そんなんじゃないです。ただ、あの……その……」 顔を真っ赤にモジモジする譲治さん。 「――だから……」 「すみません。よく聞きとれなかったのでもう一回言ってもらってもいいですか?」 「毎日のように連絡を寄越していたのが、最近ぱったりと連絡が途絶えたから心配みたいだ。一生懸命頑張ったんだ。ねえさん頼んで悪いが、写真を撮って地竜にメールを送信して欲しいんだ」 譲治さんのあとを伊澤さんが追いかけてきた。 「分かりました。すぐに送ります。伊澤さん、三春に行かなかったんですか?」 「会う人みんなに驚かれて、同じことを聞かれる。参ったな。根岸とおちおち喧嘩も出来ないな」 「喧嘩するほど仲がいいっていいますし、伊澤さんと根岸さんは二人で一人ですから」 譲治さんが書いた手紙を携帯で撮影して、地竜さんのメールアドレス宛てに送信した。 「譲治、佐治が呼んでいたぞ」 「本当ですか?」 「あぁ、玄関に行ってみろ」 「はい、分かりました。玄関に行きます」 譲治さんがバタバタと走っていった。 あたりをキョロキョロと見回す伊澤さん。 炒めものを作っている何気に橘さんと何気に目があった。

ともだちにシェアしよう!