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番外編 おかえり

「青空さん大丈夫ですか?」 一回素通りして、声をかけるか一瞬ためらったけど、寂しそうなその背中にいてもたってもいれず気づいたときには戻って声をかけていた。 「半分はな。でも複雑な気持ちだ。ねえさんにまで心配をかけるとはな。悪いな」 「悪くありません。お母さん、見付かるといいですね」 「悪いことをしてきてからてっきりとっくの昔に神様に見放されたと思っていた。母親の顔も名前も忘れてしまった。そのバチが当たった、勝手にそう思い込んでいた。でも生きていればいいことも二度、三度と続くんだな。ずっと俺はこのまま黒く淀んだ海のなかにいるんだ。そう思った」 青空さんが右手を空に向かって高々と掲げた。 「尊に会えて世界が変わった。守るひとがいるっていいな。待ってくれるひとたちがいるっていいな。ハチが言ってたな、旨そうに熟れた蜜柑のような空だって。蜜柑といえば、ハチが炬燵にあたって食べる蜜柑は最高に旨いと言ってたな。いまから冬になるのが楽しみだ」 「タンクトップのままでは風邪をひきます。その前に服を買いに行かないと」 「そうだな。これでは駄目だな。前借りとはなんだ?前借りとか前払いとかあって難しくて分からんぞ」 「給料の前借りとは、まだ働いていない分の給料を受け取ることです」 「そうか、なるほどな、尊を迎えに行くときくらいちゃんとした格好をしたい。だからオヤジに頼んで前借りしてスーツを買おうと思ったんだ」 青空さんの表情が少しだけ和らいだような気がした。

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