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番外編 ありがとうな、

夏休みに入ってすぐに光希さんと奏音くんとコウジさんが東京へと旅立った。幸ちゃんと根岸さんと伊澤さんも一緒だ。 そして、福光さんに引導を渡すために彼もひそかに吉崎さんと青空さんと蜂谷さんを伴い上京した。 十月に行われる参議院選挙に出馬を表明した福光直司さん。一時間後に後援会の事務所での記者会見を控えていた。そこへ吉崎さんが彼を連れて乗り込んだ。 「なんとも失敬な男だ。そういえばお前の母親も礼儀知らず傲慢で卑しい女だったからな。里が知れる」 ソファーにふんずりかえると吉崎さんを鼻でけなす福光さん。チラッと彼を横目で見ると、忌々しいとばかりに舌打ちした。 「みずほさんはあなたの代わりに罪を背負ったも同然です。時間がないので用件のみ伝えます」 彼は淡々と言葉を続けた。怖いくらいに落ち着いていた。 外では逮捕状を持った甲崎さんが捜査員とともに待機していた。十分だけ時間をやる。ケリをつけてこい。そう言って送り出してくれた。 ドアの前には蜂谷さんと青空さん。福光さんは一度も青空さんを見ようとしなかった。 「自分のことを棚にあげてよく母のことを侮辱出きるものだ。あなたの息子として生まれたことが俺の人生唯一の汚点だ」 吉崎さんが脇に抱えていたA4サイズの茶封筒をばさっとテーブルの上に置いた。

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