甲崎さんはその後も留まり、いとさんの親戚と友人たち、そして県警全面協力のもと相双地区の相馬地域と双葉地域で寺嶋いとさんの大捜索がはじまった。大震災前に記憶喪失などで警察に保護された人物を片っ端からしらみ潰しに調べ、いとさんらしい女性が一週間前に福島市内の総合病院の緩和ケア病棟に入院していることが分かり、甲崎さんらが確認に向かった。 自分を探してくれていたことにまず驚き、生き別れになった空くんが生きている、甲崎さんから伝えられるとその場に泣き崩れた。 何をされるか分からないから福光さんに会うのは正直者怖い。でも最後にどうしても一言、言いたいとインタビューに応じてくれた。 「トレンドが面白いことになっているぞ」 鞠家さんが姿を見せた。 「高行さん、福光さんは逮捕されてもすぐに保釈されるの？」 「判断するのは裁判所だがらなんとも言えないが、海外へ逃亡する恐れがある男を見す見す保釈しない。いとさんの身に危険が及びかねないからな」 彼から留守を頼まれた鞠家さん。大役を仰せつかり緊張して肩が凝る、そんなことを漏らしながらため息ばかりついていた。