「さすがは未知」 両手をパチンと叩く七海さん。 「だから言ったろ？マ―の目は節穴じゃないってな」 「鞠家の言う通りだった」 「どういうことですか？あ、もしかしてここにいる青空さんは本当の青空さんじゃないってことですか？」 「当たり」 「誰だと思う？」 「変装の名人っていったら宋さんしかいません。ウ―さんとフ―さんとはさっき廊下ですれ違って挨拶したので」 「未知は本当にまわりをよく見てるよね。観察力が優れているよね」 「そんなことないです」 「謙遜しなくてもいいよ」 本当の青空さんはいとさんのところに向かった。失った十五年はもう二度と戻ってこないけど、最後くらい家族水入らずで過ごしたい。いとさんの願いがようやく叶った。 青空さんのお母さんだもの。刺青を見ても驚かない。ちょっとやそっとじゃ動じなかったと鞠家さん。今ごろ、誰にも邪魔されず家族との時間を過ごしているはず。ささやかな幸せを感じているはず。 「みずほから入院費にあててくれと翔のところに金が送られてきた。青空は望んでないと翔は断ったんだが、これぐらいしか出来ないから。これで父が二人にしたことを許してもらうとはこれっぽっちも思っていない。父には一生かけて償ってもらう。強い口調でそう言われたそうだ」