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番外編ありがとうな、
「未知、この隙に逃げるよ」
七海さんに手を握られ、その場からそぉ―っと逃げ出した。
台所に人の気配があるのに気付いて一回素通りしたあと戻ってきておそるおそる中を覗くと、覃さんと目があったからびっくりしてわぁーっと声をあげたら、覃さんもあっと声をあげて驚いていた。
「悪さをして怒られた子どもの気持ちだな、これは。心臓に悪いぞ」
「すみません」
「いると言わなくて悪かったな。腹が減った。冷蔵庫の中になにかあると橘に言われたんだ」
「お昼に作った親子丼の残りがあります。温めますか?」
「いいのか」
ニコニコと笑顔で椅子に座る覃さん。
「七海、収拾がつかなくなるぞ」
「未知が恥ずかしい想いをして倒れるよりはマシだと思うけど」
冷蔵庫の中から麦茶が入ったピッチャーを取り出すとコップに注ぎ覃さんのまえに置いた。
「未知だったから本物の蒼生さんだって気付けたけど、普通のひとなら気付けなかったと思うよ。蒼生さんに会えたと思ったら中身が違う人で、糠喜びもつかの間。未知がどれだけ悲しむか考えたことはある?」
「怒っている顔もなかなか可愛いな。会わないうちにますます強くなったな。鷲崎が惚れるのも分かる」
「俺は真面目な話しをしているんだけど」
「頭が痛くなるから怒らないでくれ。今後気を付けるから。しかしだな怒り方が橘に似てきたな。いや、そっくりだ」
七海さんをこれ以上怒らせるとマズいと思ったみたいで、
「これ以上は黙ります」
覃さんが両手を合わせて平謝りしていた。
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