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番外編ありがとうな、
「嘘つきは泥棒の始まりだぞ、地竜」
「どういうことですか?」
「心と光希に赤ん坊を押し付けるために帰国したんだよ、この男は」
「ドヤ街にある夜間診療所の手伝いをしているのは事実だ」
「それはそれ、これはこれ、別問題だ」
「そうか?」
「そうだよ」
「昨日も言ったがしょうがねぇだろう。黒竜のアジトから監禁され観光客相手に売春を強要されていた十代の少女たちを救出したのはいいがベビーラッシュなんだから。優真も弟を欲しがっていたし、奏音にも兄弟がいたほうがいいだろ?」
「要するに一時的に預かってくれは嘘で、最初から押し付ける気満々だったってことだろ?」
「そう怒るな。人身売買された少女たちの社会復帰を誰かが手助けしてやらないとまた春をひさぐようになる。そしてまた赤ん坊が産まれ、商売の邪魔だと産み落とされた瞬間に殺される。こんな悲劇を繰り返していい訳ないだろう。十歳の女児が母親だったケ―スもある」
あおお兄ちゃんが黙り込んでしまった。
「固定資産税の名義が上総さんのままで、手続きをするために上総さんは縣一家に滞在している。上総さんは救える命があるなら助けてやってくれと。赤ん坊には罪はないと。今ごろ、裕貴と遼成と龍成を説得していれているはずだ」
「あ、あの……」
思わず右手を挙げた。
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