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番外編ありがとうな、

陽が朝からカンカンと照りつけていた。 「未知さん、消防と警察の火災原因調査に立ち合ってきます。兄ちゃんが来たら教えてください」 「久弥さん一人で大丈夫ですか?」 「彼氏が一緒だから心配ない」 あおお兄ちゃんが欠伸をしながら起きてきた。 「だからまだ彼氏じゃないです」 「まだ?あれおかしいな。弓削から二人は付き合っているっているって聞いたぞ。付き合ってもないのに普通ラブホに行くか?」 「だ、だから、そ、それは……」 顔を真っ赤にして手わすらしながらモジモジする久弥さん。 「兄貴が言ってなかったか?森崎はチャラチャラしているように見えて、馬鹿が三つつくくらい真面目な男だって。女性をモノとしかみない色狂いの九鬼をつぶさに見てきてからか、恋愛に関してはかなり臆病だ。自分も九鬼みたくなるのが怖いと鷲崎に漏らしたことがある」 「……宿り……」 「あ?聞こえねぇ―ぞ」 「あ、雨宿りしただけで……」 「夜通しなにもせずただお喋りしていたってか?」 容赦ない追求に、 「しました。最後まで怖くて出来なかったけど……」 久弥さんか根負けした。 「だったら堂々と彼氏だって言えばいいだろ。付き合っているのに付き合っていない。彼氏でもない。じゃあなんだ?宙ぶらりん状態の森崎がかわそうだろ?お前の兄ちゃんが言っていたぞ。森崎が相手なら申し分ないと。反対する理由が見付からないと」 久弥さんはあおお兄ちゃんの言葉を静かに聞いていた。

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