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番外編ありがとうな、

「森崎さん」 なんとなくきまりが悪そうに右手をすっと前に出す久弥さん。 「どうした?」 意味が分からずキョトンとする森崎さん。 「だから」 久弥さんの顔がゆでたこみたく真っ赤になった。 「いちいち言わないと分からない?僕よりうんと年上の癖に。少しは察してよ」 「いいのか?」 「いいに決まってる。それとも僕とは手を繋ぎたくない?」 「繋ぎたい」 森崎さんが嬉しそうに久弥さんの手を握り返した。 「こそこそ隠れないで堂々と付き合おう」 「あぁ、そうだな」 見つめ合いニッコリと微笑む二人。 「もしかして泣いてるの?」 「泣いてない。泣く訳がないだろう」 「ふぅ~~ん嬉しくないんだ」 「嬉しいよ。嬉しいに決まっているだろうが」 七海さんが固唾を飲んで二人の様子を見守っていた。 「さすがは弓削の弟だ。さっそく森崎を尻に敷いているな」 あおお兄ちゃんがくくくと愉し気に笑い出した。 「もしかして掻き回すために帰って来たとか?」 「な訳ねぇだろう。俺はただ迷える子羊の背中をどんと押してやっただけだ」 七海さんが感慨深げにあおお兄ちゃんのことを見た。 「俺の顔に何かついているのか?」 「遥琉さんに似てきたなって、ふとそう思っただけで深い意味はない」 「兄貴に?マジで嬉しい」 最高の誉め言葉にあおお兄ちゃんの表情が一気に明るくなった。

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