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番外編ありがとうな、
彼より早く帰ってきた人がいた。そう、みずほさんだ。彼がまだ到着していないと聞いてがっかりしていたけど、青空さんの姿を見付けるなり、
「ちょっと逃げないでよ。あなたに会いたかったのよ。抱き締めていい?」
「だめだ」
「なんでだめなのよ。逃げないでよ」
嫌がる青空さんを追いかけ回し、嬉しそうに抱き付いた。
「しつこさと強引なところは変わらないな。なんで俺だと分かった?」
「そりぁ、分かるわよ。だって私の大事な弟だもの。昨日の夜に日本に到着してその足でもう一人のあなたに会ってきたわよ。顔もそうだけど髑髏の刺青までそっくりで、ころっと騙されそうになったけどね」
ニカッと笑うみずほさん。
「すげぇ―な。行動力が化物だな」
「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ」
「こんなのが弟でいいのか?」
「いいに決まってるでしょう」
「本当か?本当に後悔していないのか?」
「してないわよ」
みずほさん、会わないうちにがらりと雰囲気が変わった。実家である福光家に人生を縛られる運命からようやく逃れることが出来たからか、吹っ切れて前よりうんと明るくなった。
「ねぇ青空、写真を撮らない?」
「翔が帰ってきたらな。撮るなら四人でだ。まだまだ帰らないのだろう?」
「父を応援してくれた選挙区の有権者たちにお詫び行脚をしてからね。それと青空のお母さんにもし会えるなら一目でいいから会いたいのよ」
「それは無理だな。関係者以外は面会謝絶だ。俺の母に会ってどうする?今さら謝罪されても困るぞ」
青空さんのその一言にハッとするみずほさん。
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