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番外編ありがとうな、

「おばちゃん、どっちがはれで、どっちがしんでしょうか?」 仲良く手を繋いで晴くんと真くんがひょっこりと顔を出した。 「おばちゃんに分かるかな?なかなか難しい質問ね」 二人の顔を交互に見るみずほさん。 「ママにおばさんに挨拶してきなさいって言われたの?」 こくりと頷く二人。頷くタイミングがぴったりだ。 「おばちゃんね、貴方たちに会えてすごく嬉しいのよ。未来くんは?」 「いるよ。あっち」 二人して座敷の方を指差した。 「おばちゃんじゃなくおばさんって呼ぶようにってあれほど言ったのに……」 ナオさんががっくりと肩を落とした。 「子どもは親の思いどおりになんかになりませんよ。茉弓さんがみずほさんと呼ぶようにと教えて練習までしてきたのに、ふたを開けたらこの通りですからね」 「でも橘さん、思い通りにはならないのは子どもだけじゃありませんよ」 「それもそうですね」 橘さんとナオさんが目を合わせるなりくすりと笑った。 「私がなぜ政治家を目指すようになったのか。福光の娘だからでも、礼の代わりでもない。私はただナオの未来と、子どもたちの笑顔を守りたかっただけなのよ。ありがとうね。おばちゃんに大切なことを思い出させてくれて」 みずほさんが感慨深げにそう口にすると、二人と同じ目線になるように前屈みになり頭をぽんぽんと優しく撫でた。

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