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番外編ありがとうな、

「覚悟は出来ているわ。そのために身辺整理を進めているわ。たとえ私が死んでも意志を継いでくれる人はいる。異国で死んだ女がまさか元政治家だったなんて誰が気付くでしょうね」 「誰も気付かなくても、俺たちだけが知っていればいいんです。貴女に万一のことがあれば弟たちが悲しみますよ。本当は気付いていたのでしょう。青空が直司さんの息子だって」 「はじめて青空に会ったとき、父の若い頃にどこか雰囲気が似ていたの。それで調べようとした。でも父や卯月さんみたいに裏社会に詳しい人物の伝がなくてね。断念せざるを得なかった。でもひとつだけ分かったことがあったの」 「なんですか?」 「貴方なら言わなくても分かるでしょう?」 みずほさんがくすりと笑った。 「オヤジがモテモテだってことでしょう」 「そう。びっくりした。卯月さんも未知さんもみんなに愛されているんだもの。だから昇竜会はひとつにまとまっていられる。それは固くて決して割れないまるで大きな岩山のように。今の時代卯月さんみたいな人が政治家として必要なのかもしれない。卯月さんなら政治の世界に変革の新しい風を起こしてくれるわ」 「直々に後継者に指名してくれるのはありがたいが、オヤジには欲というものがまるでない。ねえさんと子どもたちと俺ら組員と兄弟分たちを守れればそれでいい。そういう考え方の持ち主だからな。それに生きる世界が違う。俺らはならず者だ。お天道様の下を堂々と歩いたらそれこそバチが当たる」 「隠れ持った才能を発揮することなくこのまま埋もれさせておくのが本当にもったいない」 みずほさんが悔しがっていた。

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