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番外編ねえさん、ただいま

「ねえさん、泣いたら駄目だべ。俺、真面目に怒られっから」 「だって、弓削が帰ってきた。これほど嬉しいことはないから。身体は大丈夫ですか?もうどこも痛くないですか?しんどいところはないですか?」 「ありませんよ。ねえさんに会いたい一心で俺、医者は大嫌いですが、言うことをちゃんと聞いてましたよ。ねえさんの弾よけはまだ空いてますか?」 「はい。蜂谷さんと青空さんが取られないようにちゃんと見張ってくれてましたよ」 涙が次から次に頬を伝う。泣くつもりなんかなかったのに。弓削さんに会うなり涙が堰を切ったかのように一気に溢れ出した。 「医者にはあと一ヶ月は入院が必要だって言われたんだが、それじゃあねえさんとの約束を破ることになっぺした。もし居場所が黒竜にバレれば病院にも迷惑をかけっぺした。でも千里に聞いた話しでは三週間前にはバレていたみたいだ。爆弾をぶん投げられて急襲されなくて良かったって思った。でもいつ何が起きるかわかんねぇから無理言って早めに退院させてもらったんだ。オヤジに立て替えてもらった入院代は必ず払うから待っていてくれ」 嬉しそうにとめどなく喋り続ける弓削さん。口数が少なくて寡黙なイメージを持っていただけにこんなにも喋る人だったんだと知り、驚いてしまった。 「あっぱぐちを開けてなじょした?」 「なにもしてません。弓削さんの意外な一面を見れて良かったなって、そう思ったんです」 「意外でもねぇべ。まんまだぞ、俺。相変わらずおもしぇ―ねえさんだ。そこがまた好きなんだよな」 弓削さんが声を立てて笑い出した。

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