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番外編ねえさん、ただいま

縁側に胡坐をかいて座る弓削さんの姿を見つけて駆け寄る鞠家さん。 「会合を抜け出して何をしてんだ弓削。虫が入ってくるから窓を閉めろ」 「都会は明るすぎて星がよく見えない。人も多い。ざわざわしている」 「星?」 鞠家さんが怪訝そうに夜空を見上げた。 「言われてみれば確かにそうだな」 「田んぼを見たらなんか安心した。やっと帰ってこれた。やっぱりここが一番だ」 ぽつりぽつりと話す弓削さん。そこへ、 「あぁ~~よく寝た」 欠伸をしながら地竜さんが起きてきた。 「てめぇ――」 弓削さんがじろりと睨み付けた。 「なにもしていないだろう。頼むからそう睨むなって。お帰り、弓削。会いたかったぞ」 「俺はおめさんだけには会いたくなかった」 「相変わらず冷たいな」 「おめさんには言いたいことが山のようにある」 「そうか。嬉しいな、そこまで俺のことを思ってくれるなんて」 「うっつぁし」 どんなに睨まれようがそれに怯む地竜さんではない。飄々とした態度で弓削さんの隣に腰を下ろした。 「なんだかんだいってお前ら仲がいいじゃねぇか」 とんちんかんな二人のやり取りを聞いていた鞠家さんがププッと笑い出した。 弓削さんを探してきたのは鞠家さんだけではなかった。俺はお呼びじゃなかった。寂しそうに広間へ戻ろうとしたヤスさんに気付かない弓削さんではない。 「ヤス」 いつものように名前を呼ぶと、 「兄貴」 嬉しそうに弓削さんの隣に滑り込んできた。

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