胡座をかいて座る弓削さんの前に腰を下ろす森崎さん。緊張してガチガチになっていた。 「まさかおめさんと義理の兄弟になる日が来るとはな。人生何があるかわからないな」 「縁は奇なりとよく言うがまさにその通りだな。九鬼の舎弟だったとき俺が犯した罪は一生消えない。お前や遥にも酷いことをした」 わずかに険しい表情で唇をぎゅっと結ぶ森崎さん。 「罪を憎んで人を憎まず。オヤジがよく言ってるだろ。おめさんなら久弥を誰よりも大事にしてくる。そう俺は信じている」 「鷲崎から言われたんだろ？てめぇ―はヤクザに向いていない。この際だ、足を洗えってな」 「なんでその事を……」 森崎さんが驚いた表情を見せた。それは七海さんも一緒だった。 「おめさんと一緒に鷲崎組に行きたいが、久弥はこっから動きたくない。怖いんだと。トラウマの元凶である誉にいつ会うか分からないからな。それに槇島の舎弟たちに目をつけられて何をされるかわからないからな。鷲崎も鬼じゃねぇ。七海と一緒になってずいぶんと変わった。昔と比べればだいぶ丸くなった。七海の弾よけに命をかけるおめさんの気持ちよく分かるぞ。俺も同じだからな。足を洗い、カタギになり久弥と一緒に生きていく人生のほうがおめさんには合っている」 「まさかお前にオヤジと卯月さんと同じことを言われるとは思わなかったよ」 森崎さんが一旦足を崩し、座り直した。