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番外編ねえさん、ただいま
「そういう人生もありかもな」
「おめさんも国公立大学卒業のインテリだろう。法律の知識にも長けている。それを違うことに使ったらどうだ?」
「俺が辞めたらシノギが減り組の台所は火の車になる」
「俺がいる」
七海さんが右手をあげた。
「台所事情が厳しいのはどこの組も同じ。森崎に教えてもらったことを生かして立て直すから。森崎はもう一人じゃないんだし、俺より守らないといけない人がいるでしょう。ごめん森崎。悩んでいたのに全然気付いてやれなくて」
「姐さんは悪くない」
森崎さんが慌てて否定した。
「森崎、久弥を……いや、弟を頼んだ。幸せにしてやってくれ」
弓削さんが深々と頭を下げた。
「なんだ、ひゃっこい」
ペタペタと嬉しそうに弓削さんの頬っぺたを触っていたのは太惺と心望だった。
「また逃げて来たな。ねんねしないと大きくなれないぞ」
「弓削さん、ごめんなさい。追い掛けたんだけど二人とも逃げ足が速くて……」
「気にしないで下さい」
競うように弓削さんの膝の上によじ登りちょこんと座る二人。弓削さんが帰ってきてからずっとあとを追いかけ回している。ねっぱってなかなか離れようとはしない。顔を忘れられて、泣かれるよりはましだからと弓削さんが話していたのをふと思い出した。
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