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番外編ねえさん、ただいま

「ねえさんは少しでも横になってください」 「ありがとう弓削さん。さっき聞こえてきたんですけど森崎さんがカタギになるって本当ですか?」 「まだ分からない。そうなれば仕事を探さないといけない。再就職率3%の高い壁を越えないといけない」 「森崎さんならきっと越えられます。久弥さんが頑張るきっかけになります」 「まさか姐さんだけでなく未知にも励まされる日が来るとはな。人生何があるかわからない。一旦帰ってオヤジと話し合ってから今後のことを決めます」 太惺と心望にそれこそ穴が空くくらいじっと見つめられて、おじちゃん恥ずかしいぞ。森崎さんが頬を赤らめて照れていた。 「何も菱沼なんとかに就職すればいいだろう」 「それな」 縁側から覃さんと宋さんの声が聞こえてきた。 まさかと思いながら森崎さんが恐る恐る障子戸に近付きそっと開けると、二人は月明りの下で缶ビールを飲んでいた。空になった缶が何個も床の上に転がっていた。 「いつからそこにいるんだ?」 「いつからって……忘れた」 「酒のつまみにいい話しを聞けた。涙が出ると思ったぞ」 「あのなお前ら……」 がっくりと肩を落とす森崎さん。 「人生一度きりだ。後悔がないように生きる。これが一番だ」 「そうだ。愛は九鬼の亡霊に勝つ。それほど強くて尊いものだ。生きたいように生きればいい。鷲崎がくれたチャンスだ。大事にしろ。やはり日本のビールは旨いな。森崎もどうだ?」 宋さんが缶ビールを掲げると、 「酔って久弥を襲うことになりかねない。駄目」 覃さんがそれを指からすっと抜き取った。

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