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番外編ねえさん、ただいま
「弓削、いい加減気付け」
宋さんが大きなため息をついた。
「何をだ」
「さっきからずっと廊下にいるだろう。口を真一文字に結んで、胸の前で腕を組んで仁王立ちしているヤロウが」
「山に籠っていたからな。勘が鈍くなったか」
「山でなく病院な。勘が鈍くなっていたらとうの昔に死んでいる」
「そうか。それが聞けて良かった」
覃さんがホッと安堵の息をついた。
「しかし誰だべな。ヤスは四季のところに帰るって言ってたぞ。佐治は組事務所に泊まるって。いや、まさか……そんな訳あるわけねぇべした」
弓削さんが太惺と心望にちょっと待っててな、そう声を掛けながら畳の上に下ろすと、廊下のほうの戸を静かに開けた。
「何をしてるんだ?」
「別に」
今にもお化けが出そうなくらい真っ暗いところからぬっと気配もなく現れたのはヤスさんだった。
覃さんと宋さんはいつから気付いていたんだろう。これだけ離れているのによく気づいたものだと感心した。
「四季が待っているんだろ?なんでまだここにいるんだ?」
「気が変わったんだよ。兄貴のそばにいては駄目なのかよ」
ふて腐れてぶっきらぼうな言い方をするヤスさん。
「駄目ではない」
「まだ終わらないなら終わるまで廊下で待ってる。だから俺のことは気にしないで」
そう言いながらチラッと僕たちを見るヤスさん。
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