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番外編ねえさん、ただいま

「あれほど分かりやすく好きだってアピールしているのに、なんで弓削は気付かないんだ?いや、気付いていて、あえて気付かないフリをしている?なんのために?」 自問自答を繰り返すとしまいには頭を抱えてしまった。 七海さんもどう声をかけていいか分からず苦笑いを浮かべていた。 眠くなるまでとめのない話しをしながら、酒を飲み交わす弓削さんとヤスさんと覃さんと宋さんの四人。終始和気あいあいと和やかな雰囲気で、楽しくお酒を飲みながら、夜は静かに更けていった。 ろくすっぽ寝ないでそのまま朝を迎えた。 先に目が覚めた弓削さんは、自分にしがみついて寝ているヤスさんを起こさないように起き上がろうとして初めて気づいた。佐治さんが背中にくっついて寝ていることに。どんだけ愛されたんだ、俺。嬉しさに思わず顔が綻んだ。 「兄貴、どこに行くんですか?」 「起こしたか?」 「いえ、今起きました」 「散歩をしてこようかと思ってな。寝てていいぞ」 「そんな訳にはいかないです」 固く閉じられていたヤスさんの目蓋が開いた。 「兄貴がまたいなくなったら俺……それだけは嫌です」 ヤスってこんなに甘えん坊だったか?参ったな。弓削さんが指先で髪をかきあげて、深くため息をついた。 その頃僕は起きたくても起きれない状況になっていた。

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