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番外編ねえさん、ただいま

「さっきから黙って聞いていれば、弓削さんになんて口を聞くんだ」 「てめぇー喧嘩を売ってんのか?」 ゴミ拾い用のトングを振りかざす若い衆たち。 「落ち着け。危ないからトングを振り回すな」 「落ち着いてなんかいられません。俺たちの弓削さんを馬鹿にされて黙っているなんて出来ません」 「そうだ」 ヤスさんと佐治さんが宥めるも舎弟たちの怒りの感情がヒートアップして収拾がつかなくなってしまった。 「おめさんもしかすると偉い人か?」 「昔はな。今はただのおっさんだ」 「かすかだんなー!オーラがぜんぜん違うべした」 「若いのにずいぶんと訛っているな。俺も人のことは言えないがな。嘘じゃない」 弓削さんが過足さんの肩をぽんぽんと軽く叩いた。 弓削さんは三十代と若いけど二十年近く組を支えてきた功労者の一人で幹部の一人。若頭候補ナンバ―1だったこと、ねえさんにぞっこん惚れて弾よけになったことを若い衆からそれとなく聞いたしおさん。 「嘘だろ、マジか……」 さっきまで余裕をかまして粋がって大口を叩いていたのに。みるみるうちに顔から血の気が引いていった。ようやく自分が置かれた状況を把握することが出来たのか真っ青になっていた。

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