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番外編ねえさん、ただいま

「過足、しお、うちの若いのを助けてくれてありがとうな。お前ら、くれぐれもご近所さんに迷惑だけは掛けるなよ」 着流し姿の度会さんが颯爽と姿を現した。舎弟たちは緊張した面持ちで横に一列に並び腰を九の字に曲げて、軽トラの後ろに停車していた黒塗りの車に乗り込んでいく度会さんを見送った。 「過足、今日のところは帰れ」 「ヤスさん、佐治さん、本当にすみません」 過足さんが下げられるところまで頭を下げて謝った。 「たく、お前は。人を助けたのに謝ってばかりだな。踏んだり蹴ったり、おもしろくないだろ?」 「そんなことないです」 過足さんが慌てて首を横に振った。 「しおの面倒をみるとコウジ兄貴と約束したんで。しお、いつまでそうしてんだ。帰るぞ」 過足さんはしおさんの腕を掴むと助手席のドアを開けて中に押し込んだ。 「関東竜城会では見せしめにヤキを入れていたのか?」 「コウジは禁止していたが、ほんの一部のヤロウがコウジに隠れてヤキを入れていたんじゃないか?どの組織にも手に負えない問題児の一人か二人はいるもんだろ?」 「それって俺っすか?」 佐治さんが弓削さんとヤスさんをちらっと見た。 「佐治のことじゃないから安心しろ」 「菱沼組の若いのはみんな素直で、言うことを聞いてくれる。だからいじらしくて、めんげえんだ」 弓削さんが何気に発した一言に、ヤスさんの機嫌が急に悪くなった。

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