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番外編恋の吊り橋作戦

ヤスさんは運転中かもしれないからと佐治さんに電話をかけた。 「佐治か?ヤスに伝えてくれ。白雪美容室に弓削が行きたいんだが一人では心もとないから玲士を連れていくって話しだ。弓削は携帯を持っていない。だから用があるときは玲士の携帯に電話を掛けてくれ。頼んだぞ」 ―は?ふざけるな。玲士に何かあったらどうすんだ。亜優を悲しませるな。てか、お前誰だ?誰に頼まれた?俺を呼び捨てにするとはいい度胸だな― 電話に出たのはヤスさんだった。かなり機嫌が悪そうだった。あおお兄ちゃんの携帯番号をヤスさんは知らない。だから若い衆の誰かが掛けてきたと思い込んでも無理はなかった。 「ヤス、蒼生だ」 あおお兄ちゃんが名前を名乗ると、 ―だと思いましたよ― 言い訳をして話題を変えようとした。 「題して恋の吊り橋作戦だ」 得意気な表情で突拍子もないことを言い出すあおお兄ちゃん。 「真面目なツラして何を言い出すかと思ったら……」 「俺はいつも真面目だ。いいか、柚原。ミツオたちをボコボコにした連中が、いいカモが自分から寄ってきたと弓削を襲う。ヤスは自分が盾になって弓削を守る。ハラハラドキドキ、恐怖のなかでお互い協力しあって不利な状況を打破する。そして弓削はようやく気付くんだよ。ヤスと一緒にいるときだけなんでこうも胸がドキドキすんだ?そうか、これが恋ってものなのかってな」 ポカーンと呆気にとられる柚原さん。

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