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番外編恋の吊り橋作戦

兄貴、兄貴と恥ずかしいくらいに連呼して階段を一気に駆け上がってきたのはヤスさんだった。 「カドタに喧嘩を売ってねぇだろうな」 「アイツは舎弟たちを置き去りにしてさっさと逃げた。兄貴、怪我は?」 ヤスさんが心配顔で弓削さんの体をあちこち確認していると、 「大丈夫だって」 「あれ?昔はくすぐったくて笑い転げていたのに。おかしい」 「おかしくねぇよ。これでも我慢しているんだ。おぃヤス、仕事を放り投げてきたのか?」 「兄貴が心配でちゃんと終わらせてきた」 玲士さんをチラッと見るヤスさん。 「そうですよね、俺では心配ですよね。役不足なのは十分理解しているつもりです」 玲士さんはしゃがみこむと手を静かに合わせた。 「玲士はいいな」 「藪から棒にどうしたんですか?」 「なんでもない。さっきのことは謝る」 「別に気にしていません」 ヤスさんのうしろについて階段を下りる玲士さん。弓削さんは二人の先を歩いていた。みなが憧れる広くて大きな背中にはあちこちに古傷が残っている。 「……好きなんですね。見てて分かります。傷付くくらいなら最初から恋をしなければいい。ひとりで生きていくほうが気楽だしめんどくさくない。そう思っていたんです」 「マジか」 思ってもみなかったことを言われヤスさんが驚いていた。 「うわぁ~~!出た~~!」 一番後ろにいた舎弟が突然悲鳴を上げて尻餅をついた。

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