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番外編恋の吊り橋作戦

「敵方には宋は百の顔を持つ男ととして広く知られている。誰も本当の顔を知らない。そういう意味では素顔を安心して晒せる、菱沼組がとても居心地がいいということだ。身を隠すにもなにかと都合がいいからな」 パンツ一丁でタオルで髪を拭きながら覃さんが気配もなく突然姿を現したから驚いた。 「優璃とねえさんの前でなんちゅう格好をしてるんだお前は」 柚原さんがため息をついた。 「たいくんたちとついさっきまで水遊びをしていたからしょうがないだろ。雨が降ってきてもやだ、帰んないと駄々を捏ねられてボスも俺も大変だったんぞ。服を取りに行こうとしたらロンの話しをしていたから立ち寄っただけだ。連中はまた面倒な男を送り込んできたのか。ボスが本気を出すならまぁ、いっか。相手をしてやるか。蒼生、安心して東京に帰れ」 「まだ帰らないよ。あと二日はいる予定なんだ。頼むから追い出さないでくれ」 「愛しの千ちゃんと可愛いぼうやたちが待っているんだろ?早く帰ってやれよ、怪我をする前に」 「それは分かってるんだ。それよりも……」 あおお兄ちゃんが覃さんの筋肉隆々な体をじっと見つめた。 「初めて見たがいい体をしてるな。ムキムキじゃないか。胸板も厚いし、二の腕の筋肉も固いし、腹もシックスパックだし。かなり鍛えているんだろ?触ってもいいか?」 「聞く前に触っているだろうが」 あおお兄ちゃんが興味津々、ぺたぺたと覃さんの体を触りはじめた。 「地竜も傷だらけだがお前もだな」 「平和な世の中が来れば傷なんて消える。でもそれは無理かもな。決して叶わないから、願ってはいけない」 覃さんは迷惑そうだったけど日々鍛え上げた体を褒められて満更でもないのか嬉しそうだった。そのとき、 「ねえさん、ガキが」 若い衆が駆けてきた。

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