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番外編恋の吊り橋作戦

「あれ?なんで空なの?」 お茶碗二杯分は残っていたはずなのに。あちこちキョロキョロと見回していたら、 「パンケーキならあるぞ」 地竜さんが後ろにいたからびっくりした。覃さんみたく気配を全然感じなかった。 「地竜さんが助けた二歳の男の子のお兄ちゃんが弟を助けてくれてありがとうってお礼言いに来たんです。会いますか?」 「いや、会わない。斉木に頼んでくれ」 地竜さんの表情はさえなかった。 「子どもを裏組織に売り飛ばして借金をチャラにする。なにも大陸だけの話しではない」 「じゃあ、あの子は?」 「子どもは無垢だからな。親の言うことは素直に聞いてしまう。肝が座っているのが逆に怖いくらいだ。サツに引き渡すとすぐに決めた卯月の判断は正しい。未知、情けは無用だぞ。親はヤクザに追われる多重債務者だ」 「そんな……」 言葉を失った。 「来る者拒まず。女と子どもにはめっぽう弱い。だから簡単に騙せるんじゃないか。遥琉も安く見られたものです。子どもをだしに使うなど許せませんね」 滅多なことでは怒らない橘さんが苛立ちを露にしていた。パンケーキをアルミホイルで包み飲み物と一緒に紙袋に入れて彼のところに急いで戻ると、 「七年たったらまた来い。そのときは歓迎してやる。弟も連れてこい。まとめて面倒をみてやる」 彼が男の子の頭を撫でていた。 「ほんと?」 「あぁ」 「約束だよ」 気を許したのか彼と指切りげんまんをする男の子。さすが遥琉さんだ。子ども好きということがきっと男の子に伝わったのだろう。さっきまでは緊張もあったかもしれないけど笑顔が少なくて表情が乏しかったのに。ニコニコの笑顔を浮かべていた。 「オヤジ、サツが来ました」 若い衆が呼びに来た。 「どうした?」 「嫌だ」 ぶんぶんと首を横に振る男の子。

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