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番外編恋の吊り橋作戦
「それ、俺も同じです」
「だろ?とにかく居心地がいい。ミツオだっけ?なかなか寝心地がいい枕だ。手のぬくみで蕩けそうな柔らかさもあり、弾力もある。実に滑らかな肌だ。すべすべで触れているだけで、感じてしまうよ。きっとこっちも触りがいがあるだろうな」
そろりそろりととミツオさんのお尻に手を伸ばす覃さん。
「この肉感と迫力がたまらんな」
ミツオさんはされるがまま。嫌だとも、擽ったいとも、うんともすんとも言わなかった。脇腹をこちょこちょと擽られても顔色一つ変えなかった。
「擽ったいのを我慢しているわけでもないよな?もしかして何も感じないのか?」
「すみません」
「謝る必要はない。そうかなるほどな。触り放題じゃないか」
ミツオさんの顔色が悪いことに気付く覃さん。
「冗談だよ。お前もトラウマ持ちか。ジョーも楮山たちに好き勝手にされて触られるのと暗闇がいまだに怖い。心の傷はなかなか癒えないからな。そうか、ミツオお前も苦労してきたんだな。下っ端は兄貴は選べても、ボスまでは選べないからな。とんでもないヤロウでも黙って従うしかないからな。大変だったな」
「覃さん……いえ、なんでもないです」
何かを言い掛けて途中で言葉に詰まるミツオさん。唇の内側を血が出るほど噛み締めた。
その頃、菱沼金融では、森崎さんと誉さんが静かに対峙していた。四季さんは機転を利かせてくれた若い衆たちが直前に組事務所に避難させてくれたから無事だった。
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