3803 / 4006
番外編恋の吊り橋作戦
なんで?男の子が不思議そうに首をかしげた。
「お前ら何をぼぉっとしてんだ。ガキを誉から離せ!」
警備の網を掻い潜りいつ建物内に潜り込んだのか。おそらく業者さんが荷物を出し入れしていたときに隙をついて入り込んだのかもしれない。
タイミングが悪すぎる。男の子にしてみたらみんな同じ顔に見えるから、ここにいる全員が菱沼組の構成員だと勘違いするのも無理はない。
「探す手間が省けたよ」
にやりと薄笑いを浮かべる誉さん。
「親の言うことはちゃんと聞かないと駄目だろ?躾が必要だな。帰るぞ」
男の子の首根っこをがしっと乱暴に掴む誉さん。
男の子がようやく飛び込む相手を間違えたことに気づいたときにはもう手遅れだった。そのまま引きずられていった。
なんとか男の子を助けようとあとを追いかけるヤスさんたち。建物から出ようとしたら、
「おじちゃん出ちゃだめ!」
男の子が大きな声で叫んだ。その直後、パンパンと二回、乾いた音があたりに響いた。
「きょうそさまはお兄ちゃんたちが悪いっていうけど、お兄ちゃんたちは悪い人じゃない。それが分かったんだ」
えへへと笑う男の子。
「いいからもう喋んな。今救急車が来るから」
血まみれの首を手で押さえるヤスさん。
足手まといになる、邪魔でしかならない。誉さんはなんら躊躇することなく男の子の首を隠し持っていたハサミで刺して他の信者たちを置き去りにしてさっさと自分だけ逃げた。
ともだちにシェアしよう!

