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番外編恋の吊り橋作戦
「誰からだ?」
「渋川だよ。佐治が渋川を差し置いて手塚に電話を掛けたのが面白くないだろ?愚痴を延々と聞かされるこっちの身にもなってほしいものだ。あやまった。俺はそんなに暇じゃねぇぞ」
はぁ~と深いため息をつく彼。
「俺、暇人だから相手してやろうか?ボスも卯月も病院に行くんだろ?」
「いいのか?」
「たまにはな、渋川とも喋らないとな。何事もコミュニケーションが大事だからな。任せておけ」
「分かった。覃に任せる」
彼がジャケットを颯爽と肩に担ぐと、地竜さんが然り気無く彼の手を握った。
「暑苦しい」
「そう固いことを言うな。コミュニケーション大事だろ?」
「あのな地竜……」
「車に乗ったら離すよ」
なぜかあおお兄ちゃんと信孝さんに対抗心をメラメラと燃やしている地竜さん。こんなに甘える人じゃなかったのに。どうしたんだろう?何かあったのかな?僕もだけど彼も心境の変化に戸惑っているようだった。
「ここを発てばいつ終わるか分からない血なまぐさい戦いにまた身を投じることになる。だから現実逃避をしないと正気でいられないんだよ」
「覃さん、これからも地竜さんのことをお願いします」
「未知こそ卯月を頼むな。卯月はボスのライバルだ。いなくなったらうちのボス、張り合いがなくなる」
はいと笑顔で答えた。
「未知」
忘れ物でもしたのか彼と地竜さんがすぐに戻ってきた。
「どうしたの?」
「アレがまだだったから」
「アレって?」
「いちいち言わないと分からない?」
彼が悪戯っぽい笑みを浮かべると頬っぺたに軽くキスをしてくれた。
地竜さんは髪にチュッとキスをしてくれた。恥ずかしさで顔を真っ赤にすると、満足したかのように二人はにっこりと微笑んだ。
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