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番外編恋の吊り橋作戦
「ママ、ぱぱたんいたよ!」
遥香がニコニコの笑顔でひょっこりと現れた。
「人を襲った親子連れの熊とは個体が違うと判明して麻酔銃で眠らせて山に帰すことにしたみたいだよ」
「紗智、補足説明ありがとうな。どうした?そんなに驚いて?」
蜂谷さんが聞いた。
「だって弓削さんがいるから」
「弓削がいるのは当たり前だろ?」
「だってもう二度とこの光景が見れないかもって何度思ったか。弓削さんがいないとやっぱり寂しいし、物足りない。バーバがいてもマーね元気がなかったから。だから良かった」
「なんか嬉しいな。待っていてくれる人がいるっていいな。紗智、カシラに焼もちを妬かれるからそのくらいにしておいてくれ」
弓削さんの表情が緩んだ。
「さっき聞こえてきたんだけど玲士さんが人質になっているって本当?」
「あぁ、本当だ。でも心配はいらない。宋が一緒だから」
「宋が一緒だからよけいに心配になる。だって無茶ばかりさせるし。宋は何度も危ない経験をしているけど玲士さんはそんなに経験していないから」
「いいか紗智、何事も経験あるのみだ。喧嘩もそうだし、相手との交渉もな。一朝一夕に簡単にはできない」
覃さんがそこで言葉を止めると、ふと携帯の画面に目をやった。
「インターの料金所に着いた。サツが検問をしている。このまま高速に乗れと注文をつけてきた。ここまでは予想していた通りだ。サツがに誉に気付き職務質問をして時間を稼いでくれればいいんだが」
「どういうことだ?」
「ロンは三秒と待てない。思い通りにいかなくてかなりイライラしている。状況を打破するのにあと一発くらいは撃ってくる。未知の大事な婿を囮にするわけにはいかないだろ?サツがいればサツを狙う」
「位置情報は?オンになっているんだろ?」
「あぁ。料金所で止まってままだ。動かない」
壱東さんが車から離れるときに手に付いた血を運転手席側のドアノブだとすぐにバレるから、ミラーに残してきたと連絡があった。それに警察が気付いて職務質問をして車内を捜索してくれれば。藁にもすがる思いで二人の無事を祈った。
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