3811 / 4006
番外編恋の吊り橋作戦
「手術は成功した。でも意識は依然として戻らないままだ。あとは本人が生きたいと願う生命力にかけるしかねぇべ」
弟のとあくんのほうは順調に回復しているみたいでようやく呼吸器が外れた、集中治療室から小児病棟に移ることになったと斉木先生が教えてくれた。
「なんであんちゃんは起きないの?とあが起きたら遊ぼって指切りげんまんしたんだよ。なんで、なんでって看護師に質問攻めをして、あんちゃんと一緒に寝るって駄々を捏ねてかなり困らせている。不謹慎かも知れないが俺もバーバの意見に賛同だ。このまま親が名乗り出ないほうが二人は幸せなのかも知れない」
「斉木先生いろいろとありがとうございました」
「俺は何もしてねぇ。優先生の腕がいいんだべした。優先生は神様みたいな手を持っている。いだましー」
「ボスは戦場を駆け回っているからな。役に立てたようで良かった」
「覃さんなんでおめさんここさいんだ?えらいことになってんの知らねぇのか?」
まさかいるとは思わなかったのだろう。驚いた声をあげる斉木先生。
「なんでって見ての通り留守番だ。宋は心配無用だ」
「相変わらずつめてぇー男だな」
「誉め言葉としてもらっておく」
にやりと笑う覃さん。
「そう言えば玲士さんから連絡は?」
「それがまだなんです」
「連絡がないということは無事だってことだろ?違うか」
心配でため息しか出ない僕とは違い覃さんは普段と何ら変わらず。飄々としていた。
玲士さんから無事ですと電話が来たのは三十分くらい過ぎてからだった。
あのな、覃。ひとつ聞きたい。玲士さんはそう切り出すと、なんでこうも大陸の人たちは気性が激しいんだ。まさに瞬間湯沸かし器だ。挨拶代わりに一発撃ってきた。ひとつ間違えたら一般人を巻き込むところだった。
ともだちにシェアしよう!

