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番外編恋の吊り橋作戦
「相変わらず風来坊な男だ」
「俺がいないと遥琉が寂しくて泣くから用事をさっさと済ませたらまた帰ってくるとそう言ってましたよ」
「地竜がいなくても寂しくないし、それに泣かねぇし」
「強がらなくてもいいですよ」
「強がってねぇぞ」
プイッとそっぽを向く彼。
「そんなことよりも額田さんがお待ちです」
「約束は八時のはずだ。二時間も早いぞ」
「急用が出来たので始発の新幹線で東京に向かうことになったそうです」
立ち去ろうとした橘さんに、
「橘」
と声を掛ける彼。
「珍しいですね、遥琉が私を呼び止めるなんて」
「あの子に一晩中付き添っていてろくすっぽ寝ていないんだろ?家事は紗智たちに任せて少しは寝てくれ。お前までぶっ倒れたから柚原に顔向けが出来ない」
きょとんとしたのち橘さんが嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「自分が人たらしだという自覚がないのが遥琉らしくていいんですけどね」
彼を見送ったのち橘さんがやれやれとため息をついた。
「蒼生さんはいつまで未知さんにねっぱっているつもりですか?」
「あと五分したら離れるよ。次いつ会えるか分からないんだから未知を堪能させてくれたっていいだろう」
「皆さんいい年をした大人なのになんで一回りも年下の未知さんに甘えるんでしょうね。未知さんの体は一つしかないのに、本当に困った人たちですね」
「なんでだろうな」
あおお兄ちゃんがぎゅっと抱き付いてきた。
「それ以上未知さんに触ったら問答無用で千里に言い付けますからね」
彼と地竜さんが脱いだ浴衣を真顔で畳む橘さん。目は笑っていない。かなり怒っている。あおお兄ちゃんもそのことにすぐに気付いて、慌てて手をひっこめた。
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