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番外編恋の吊り橋作戦

「オヤジ、お取り込み中失礼します」 ガラリと戸が空いてヤスさんが顔を出した。 「未知から聞いた。額田さんが乗車した新幹線の車内でペットボトルが爆発してその影響で新幹線が止まっているんだろ?」 「はい。さすがはねえさんです。機転が利きます。いやぁ~~お見それいたしました」 「たまたま偶然鷲崎から電話が掛かってきたんだ」 「いや、いや、あの鷲崎さんと対等に話せるねえさんはスゴいです。あの渋川さんだってねえさんのことは一目置いてますよ」 「それは未知が兄貴の女房だから、だろ?」 彼の膝枕で目を閉じて横になっていた信孝さんが不機嫌そうにボソリと呟いた。 「信孝さん、言われませんか?」 「何を?」 「オヤジを一人占めするなとは言いませんが、しつこいってですよ。それとその曲がりくねった性格を少しは直したほうがいいんじゃないですか?」 年上相手に物怖じせず自分の考えを堂々とぶつけるヤスさん。 「しつこくないよ。それに性格だって」 信孝さんが目を開けて彼をじっと見つめた。 「兄貴もそう思うだろ?」 「俺もそうだから人のことは言えねぇが……なんて答えていいか。あやまった」 ため息をつきながら髪をくしゃくしゃと掻く彼。もごせもごせと言いながら信孝さんが宥めた。 考え事をしたいから膝を貸せってヤスに言ったらいいんだ。お前からの頼みはヤスは絶対に断らない。一人で壁に向かってぶつぶつ言っているよりは聞いてくれる相手がいたほうがいいだろうと鞠家さんたちに言われた弓削さん。ヤスさんに声を掛けるタイミングがなかなかつかめず、なじょすっぺ。あやまったな。とため息をつきながら遠巻きに眺めていたら、 「弓削、何事も当たって砕けろだ」 柚原さんに背中をどんと押された。

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