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番外編恋の吊り橋作戦
世話になったと短く礼を言うと手塚さんも車に乗り込んでいった。
「あの~~オヤジ。手塚たちを見送らなくていいんですか?」
玲士さんが彼に声を掛けた。
「森崎と積もる話もあるだろ?今までは隣近所に住んでいたから会おうと思えばいつでも会えたが、これからは会いたくてもなかなか会えなくなるだろ?」
「方や新婚ですしね」
「そうだな」
彼がふふっと微かに笑った。
「パパ、あと十分ではじまるよ~~!」
一太が大きく手を振った。
「おぅ、今行く」
たまには一太を家から連れ出すか。彼がそんなことを口して。駅前の商業施設の最上階にあるプラネタリウムに連れていってくれた。
貰いもののチケットがたまたま二枚あったんだ。それだけだ。照れ隠しにぶっきらぼうな言い方をする彼。
「小学生だし親と手を繋ぐ年でもねぇよな。恥ずかしいよな」
差し出した手を引っ込める彼。
「そんなことないよ」
一太が嬉しそうに彼の手を握った。
「一太ね、パパの手が大好きなんだ」
「そうか。ありがとうな」
一太は昔から変わらねぇ―な。金魚のふんみたくいつも俺にくっついて歩いて。大人になればいつかは親元から離れていく。子の成長は嬉しいがその反面さみしいものだ。ウザイと嫌われない程度にいじくりこんにゃくするか。そんなことを思いながら一太に優しく微笑む彼。
「三人でアイスクリームでも食べて帰ろうか?」
「うん。やった~~!」
一太の表情がぱぁ~~っと明るくなった。
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