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番外編恋の吊り橋作戦
うわぁ~っと大きな声をあげて店内を走りまわり、他の子と追いかけっこをはじめた男の子。ドリンクバ―で飲み物を手にしたお客さんと何度もぶつかりそうになっているのに親は友だちと喋るのに夢中で、男の子が席に戻ってくるとうるさい、あっちいってとしっしっと追い払われ、居場所がない男の子はまた店内を走り回り騒いでいた。店員が何度か親に他のお客様の迷惑になりますからと声をかけたけど、子どもなんだからしょうがないじゃないと開き直りまったく聞き耳をもたなかった。
「あ、あの子……」
「一太も気付いたか。さっきの子だ」
「坊っちゃん、飲み物は玲士が持ってきますので飲みたいものがあったら遠慮なく言って下さいよ」
「ありがとう玲士さん」
にっこりと微笑む一太。
「なんかね、あの子を見てたら海翔くんを思い出したんだ。ぜんぜん連絡ないし、元気かなって」
一太の言葉にハッとし胸を引き裂かれる想いをする彼。
「連絡がないってことは元気だってことだろ?待っていればそのうち弓削みたくただいまって元気に帰ってくる」
「うん、そうだね」
一太が一口大に切ったハンバーグを頬張った。
玲士さんがドリンクを取りに席を立ったとき、他の子と追いかけっこをしていた男の子が勢いよくぶつかってきた。グラスが床に落ちてガシャ―ンと大きな音を立てて割れた。その音に驚いて泣き出す男の子。
「ちょっと!」
親が鬼の形相ですぐにすっ飛んできた。
子どもに無関心で放置していたのにも関わらずだ。
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