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番外編恋の吊り橋作戦
「このおじちゃんが押したの。僕、なにも悪いことをしてないのに」
「は?ぶつかってきたのはそっちだろう」
「痛い、痛いよ」
男の子がまた泣き出した。
嘘泣きだとすぐに気付く彼と玲士さん。もう少しまともな演技が出来んのか、この親子は。
おおかた目的は金。示談金を脅しとる魂胆だろう。プラネタリウムで一緒にいた、スタッフに対して横柄な態度をとっていた人相の悪い男が間違いなく出てくる。
「一太、飲み物を取ってこよう」
相手の出方を見るために彼が一太を連れて席を離れた。
男の特徴をメールであおお兄ちゃんに伝えて、神政会と楮山組の幹部に一致する男がいないか至急確認してくれと頼んだ。
「うちの子が嘘をついているとでも?」
高圧的な態度をとる母親らしい女性。
「さっきも言いがかりをして。ふざけるんじゃないわよ。どうやら痛い目に遇わないと分からないようね。この子の父親は指定暴力団、神政会の幹部なのよ。食事代を払ってくれるなら今回だけは見逃してあげてもいいけど」
「へぇ~神政会ね」
玲士さんはさほど驚かなかった。
「どうした?」
連れの男が姿を現した。
「あなた、コイツよ。凝らしめてやって」
「常識というものを知らないのか?店の迷惑になるし、美味しい飯だって不味くなる。まわりを見ろ。出ていくのはあなたたちのほうだ」
年上の厳つい強面の男に対して臆することなく堂々とした態度を取る玲士さん。
「只者じゃねぇな。てめえ―何者だ」
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