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番外編恋の吊り橋作戦
「また来たのか。さっき怖いお兄ちゃんにあっぷ、めってされたばかりだろう」
穴が空くくらいじっと宋さんを見上げる男の子。
「のっぽのおじちゃんがそんなに珍しいか?」
「ボサッとしていたら親に置いてかれるぞ。いいのか?」
「うん」大きく頷く男の子。
「困ったな。おじちゃん、誘拐で捕まってしまうだろ?助けてやりたいがお前の父ちゃんヤクザだろ?おじちゃんただの人だから無理だ。ごめんな、お巡りさんに助けてもらえ」
「おじちゃんさっき新幹線に乗るって言ってたよ」
「なんだ聞こえていたのか。参ったな。分かったよ。おじちゃんがこれから言うことをしっかり聞け、いいな」
手短に説明する宋さん。男の子に紙切れを渡した。男の子はそれを大事そうにポケットにしまった。
「誰かは見ていてくれる。だから希望は捨てないくていい」
おぃ、おぃ、ただの人って。どこがただの人なんだよ。嘘つきは泥棒の始まりだろう。ツッコミどころが満載でミツオさんが苦笑いを浮かべていた。
でもな、子どもには不思議と好かれるんだよな、この人。磁石みたく吸い寄せられるんだよな。見てくれはこうだけど子ども好きで、心根も優しい。なんでそんなヤツが死神の構成員をしているんだか、いまだに分からない。不思議と嫌いになれないんだよな。中身はとんでもない変態だけど。ミツオさんが一つため息をついた。
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